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不妊治療の孤独と現実。「不妊治療をやめたい」と思う時

不妊治療を始める日本人の増加

不妊治療を始める日本人の増加

世界の国々を見渡してみると、不妊治療人口の増加は日本だけの傾向ではないようです。
しかし、近年の国内不妊治療人口の伸び率には目を見張るものがありますよね。
わずか数年間で、不妊症に悩むカップルの割合は10組に1組から6組に1組にまで増加しました。

2015年は不妊症に悩む夫婦の割合は7組に1組と言われていたのですが、2016年に入ってからは6組に1組とする団体が主流になりつつあるようです。
それがこの年後半に入ってからは5組に1組とまで言われるようになっています。

精子減少や晩婚化、不妊症の定義が「2年間自然妊娠が認められない」から「1年間自然妊娠が認められない」に変更されたことが影響しているのでしょう。
これにともなって不妊治療を受ける人口も着実に増加しているわけです。

晩婚化、晩産化の傾向は以前から警鐘を鳴らされていましたが、2000年の出産年齢分布のピークが25歳から29歳であったのに対して2011年には30歳から34歳に明らかなピークがあり、2016年の現在までその形が継続しています。
出産年齢の山形のピーク、30歳から34歳の出産数は2015年の人口動態調査によると364,870人でした。
2位の年齢層が25歳から29歳で262,256人。3位が35歳から39歳で228,293人。次いで4位が20歳から24歳で84,461人。

そして40歳から44歳の52,558人。15歳から19歳の11,890人。45歳から49歳の1,256人と続きます。
個人的には50歳以上の出産人数が52人、14歳以下の出産人数が39人記録されている点が驚きでした。
社会的に見て、少なくとも日本では14歳以下の出産は稀な事態ですよね。自力で生活できない「子ども」が子どもを産んでいる事実は衝撃としか言えません。

そして、1995年には0人だった50歳以上の出産人数が2000年以降6人、34人、19人、47人、58人、52人と、微減の年度を挟みながらも徐々に増加傾向に向かっていると政府統計は物語っています。
女性が35歳以上になると高齢出産となり、ダウン症児の生まれるリスクや流産などのリスクは飛躍的に上昇します。

50歳以上になるとなおさらです。
母体の命すら危険にさらされるというのに、それでもなお子ども出産に臨んでいるという現実。
出生率は確かに微増傾向にありますが、女性の出産年齢は平均的に上昇しており、不妊治療人口が30代後半から40代を中心としているという情報もあります。

しかし、40代前半の不妊治療成績は2014年のデータによると約50%で、40代後半になると出産の成否にかかわらず受精率9,1%にまで落ちるのだとか。
20代を取り巻く社会環境は厳しく、多くの女性が出産適齢期を逃してしまう条件は今後も続くでしょう。
そう考えると、不妊治療成功率が低くても望みを託そうと考える夫婦はこれからもさらに増えていく可能性が高いと思われます。

参考
厚生労働省人口動態調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei15/dl/08_h4.pdf
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000314vv-att/2r985200000314yg.pdf#search=’%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%94%A3%E7%A7%91%E5%A9%A6%E4%BA%BA%E7%A7%91%E5%AD%A6%E4%BC%9A+%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E6%B2%BB%E7%99%82′

現実は厳しい? 「不妊治療をやめたい」人々

現実は厳しい? 「不妊治療をやめたい」人々

日本産婦人科学会は妊娠、出産に関する正しい知識の普及を目指していますが、残念ながら日本は性教育については後進国です。
フランスをはじめとした西洋諸国では卵子の老化や出産適齢期、精子減少などの情報が当たり前のように教育に盛り込まれていますが、日本ではカリキュラムにはあったとしても、なるべく直接的な表現を避ける上に学習範囲の中では比重が高くありません。
授業でもさらりと流すだけで終わったり、別紙でプリントを配って終わりというケースも。

事実、不妊治療が保険適用内であるフランスでは不妊治療を受ける中心年代は20代なのだとか。
日本の不妊治療成功率が低いのは受療者の中心年齢が30代後半からである点が影響しているというのも頷けますね。

それでもなお、不妊治療には自然妊娠が望めない男女や、器質的な異常を抱えた男女にとっては唯一の希望です。
日本人の不妊治療受療者は増えています。
しかし、いざとなって不妊治療を始めてからすぐにもやめたいと言い出すカップルも多いのです。

理由はさまざまですが「想定以上に費用がかかる」「検査が痛い」「治療がこんなにつらいと思わなかった」「孤独に耐えかねる」「夫の理解のなさに絶望した」といった声が多く、中には「こんなにつらい思いをしてまで子どもを産まなきゃいけないの?」という女性も。
ある程度不妊治療を続けている男女では「孤独感」のつらさを訴える傾向が強いようです。

不妊治療は男女どちらか一方だけでは治療になりません。
夫婦そろって初めて不妊治療になるわけで、開始前に2人で費用の負担や治療、検査に伴う副作用の問題。
また、いつまで続けるか、どこまでやるかといった話し合いの場を設けているはずです。

場合によっては夫側の理解を得られないまま妻のみで治療を受けるケースもあるようですし、残念ながらそうした夫婦が日本ではよく見られるようですが、それにしても最低限の話し合いを経て開始したはずの治療ではあるわけですよね。
そうであるならば、少なくともはたからしてみれば「そのつらさは分かっていたはずなのではないか」「予想できたつらさなのではないか」と思われても仕方ないでしょう。

しかし、不妊治療受療者が耐えなければならないプレッシャーやストレスは、実際に治療を受けて見なければ理解できないものでもあるのです。

なぜ不妊治療はツライのか、なぜ孤独を感じるのか

なぜ不妊治療はツライのか、なぜ孤独を感じるのか

不妊治療には男女とも、一般の医療行為とは異なる苦しみが伴います。

まず、不妊症の原因を調べるためには通気検査やホルモン検査、造影検査などを受ける必要がありますが、この不妊症検査自体が非常に痛いものなのです。
麻酔を使用すれば検査時点で痛みを感じないとしても、麻酔が切れれば痛みます。

また、麻酔が聞いていてすら痛いという声もよく上がっています。
本来は外部に触れない卵管や精管に管を通して卵子や精子を回収する治療もあります。その痛み、つらさ。想像できるでしょうか?

残念なことに、人間には想像力はあっても感覚の共有器官はありません。
だからこそ自立して生きられるのですが、人生を共にするパートナー間であってすらお互いの痛みは共有できないのです。
不妊治療人口が増えたと言ってもまだまだ正常妊娠の方が割合としては当然多く、「自然に妊娠できない」こと自体が不妊治療受療者の心理的負担を増やす側面もあるはず。
それが本人たちの劣等感につながり、他者と連帯できない孤立感を深めます。

また、ホルモン剤の使用によって否応なしに精神的に不安定な状態に追い込まれるうえに「自分にしか分からない身体的な痛み」がさらにそれを助長して、不妊治療の言い知れないつらさを生み出しているわけです。
どうしてツライのか、どれほど痛いのか、言葉で説明できたとしても本人の孤独感やツラさは解消できません。

また、想像や予想と実体験は別のもの。
たとえ正しく覚悟できていたとしても、実際に自分が治療に際して被ったダメージが耐えがたいレベルであると感じる方は多いでしょう。
どんな病気や怪我でも同様の事態が起こり得るのですから、不妊治療開始早々にやめてしまう人がいても不思議はないのです。

ただひとつだけ理解しておいていただきたいのは、それを「ドロップアウト」や「戦線離脱」などのようにネガティブに考えるべきではないということ。
「産まない人生」をどのように前向きに生き、人生に価値あるゴールを見出すか。
特に最終不妊治療の年代である40代後半に差し掛かってからは、これが命題になると考えていいでしょう。

不妊治療のはじめ時とやめ時を考える

不妊治療のはじめ時とやめ時を考える

成功率を追求するのであれば、不妊治療を受けるべきタイミングは20代です。
早ければ早いほど成功率は高くなります。

しかし、タイミング法や人工授精以上の段階にステップアップすると、治療に必要な費用が格段に高くなること、また、生殖補助医療助成事業による補助金に回数制限があることなどから、治療を受けられる回数に限度がかかるのです。
体外受精は3回を目途に考えるべきという医師の見解もあります。不妊治療は確かに希望の光ではあるものの、決して万能ではないのだと理解しておいてください。

ある不妊治療クリニックでは、体外受精の成功率は20%から25%としています。
1回で成功する割合は5分の1から4分の1。
それに1周期あたり25万円から40万円程度の治療費がかかり、しかもその間女性は仕事がほぼできないと思っていいでしょう。
夫婦共働きの場合は仕事をやめて治療に臨むしかありません。
しかも、費用はこれだけではないのです。

遠方のクリニックで治療を受ける場合には宿泊費や交通費などもかさんでいきますから、こうした経済的な理由から不妊治療の限度を定める夫婦も多いようです。
本来成功率が高い20代ではこの負担を乗り切るだけの経済的な体力がないケースが多く、ある程度資金がある30代後半、40代では不妊治療の成功率が低い。
この矛盾が日本の不妊治療業界に煩悶を産んでいるのです。
若いほど不妊治療の成功率が高い。これは動かしがたい現実として存在します。
しかし、社会的側面から思うに任せない事情があるはず。

不妊治療のはじめ時は「なるべく早いうちに」と考えるといいでしょう。
そして、やめ時は「事前に決めた時」か、「やめようと思った時」であるべきです。

望みがあるうちにやめるわけにいかないというご夫婦もいるかも知れませんが、残念ながら年齢が上がれば妊娠成功率や、正常妊娠の割合、出産に至る割合は下がる上、母体への危険も上昇します。
冷徹に自分たちの年齢や身体状況を見定め、治療内容と費用、成功率、そして「その後」を鑑みてやめ時を判断するようにしてください。

人はどのように生きたとしても必ず何かしらの後悔に苛まれるものです。
完全無欠の人はいません。後悔しない人もいません。それは、子どもを産んだとしても、産まなかったとしても同じこと。
どの道を選んでも後悔する日があると決まっているのなら、せめて「目の前にいる相手を大事にする」意識だけでも、忘れないようにしてみてはどうでしょうか。

不妊治療は受けるべきなのか

不妊治療は受けるべきなのか

そもそも不妊治療は受けるべきなのかどうかという議論があります。
無情ともいえる意見では、不妊症の劣性遺伝をあえて残す意義について問う声も。
社会的な発言力がある人々から出るこうした見解は影響力が強く、報道で拡散されては不妊治療関連団体からの反発が盛り上がるといった流れを繰り返している状況です。

その昔、不妊治療黎明期には命の倫理問題から可否が問われてもいました。
生殖補助医療は人間が誕生する命の過程を明らかにし、人の手によって操作できることを示したのです。
不妊治療によって生まれて、健康に育ち、次の世代に命をつないだ子どもは数知れません。

海外では代理出産のような方法から係争に発展する事例が多く、母、父、代理母3者の遺伝的影響をあわせ持つ子どもに対しては確かに今後も倫理的な問題が伴うでしょう。
しかし、正しく夫婦の不妊症と向きあって不妊治療に挑もうと決めたのであれば、新たな命を育もうと決めた意思は前向きなものであるはずです。
それを否定する権利は誰にもありません。

不妊治療は受けるべきなのか

今この時にも、不妊治療を受けようかどうしようか迷っているご夫婦がいるはずです。
6組に1組、あるいは5組に1組という高確率で不妊症に悩む夫婦にあたる環境では、ふと話しかけた相手が人知れず悩んでいるという可能性だってあるのですから。
不妊症を現実的に考えて、不妊治療を受けるべきかどうか迷う時。
壁となる要素は費用や治療の痛みだけではなく、予想される治療後の心理的ダメージもあるはずです。

つらい痛みや経済的負担を乗り越えて、それでも妊娠に至らなかったら。
妊娠できたとしても出産にまで届かなかったら。
つらさの向こうにさらなる絶望が待っていたとしたら。
切なる希望を託して治療に挑み、それでも報われない割合は高いのです。
少なからぬ割合で希望がかなわない現実を前にして、二の足を踏むのは当然のこと。迷わず飛び込んで治療をまっとうできる人はごくわずかです。

不妊治療の成功率は若い方が高いとは言っても、納得できないまま、覚悟もできていないのに始めたとしても、まずうまくは行かないでしょう。
夫婦でよく話し合い、どうして子どもが欲しいのか。
どういう人生を送りたいのか。
どうして夫婦になろうと決めたのか。治療を受けるとしたらいつまで、どこまでやるか。
途中でやめたくなったらどうするか。そうしたことを徹底的に話し合ってください。

その過程でどんな結論に至ったとしても、人生を決定する権利は本人のもの。
誰が否定できるものでもありません。
自由に「本当に必要なもの」を見極め、パートナーを見つめ、世の中に意識を広げて決断するようにしましょう。

もしかしたら必要なものはすでに目の前に揃っている、ということもあります。
優先順位さえ明確になれば、あとは自然にどうするべきか決められるはずですよ。

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ライタープロフィール

円谷円谷ミナミ
基本的に斜めの姿勢で世の中を見つめるフリーライター。
性的思考はボーダーレス。ただし多少女性に甘い。
自分のキュアリは?(女性としての内面磨き)(沈思黙考・無言実行)
”秘すれば華”を人生を通して実現する方法を模索している。
乙女の窓辺~女性にまつわる、うわさの検証~の四コマ連載中