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自分の免疫が自分を攻撃する「自己免疫疾患」の臓器別種類を紹介!

自分の免疫が自分を攻撃する「自己免疫疾患」の臓器別種類を紹介!

自己免疫疾患の特集 自己免疫疾患とは? 自分を守る「免疫」が攻撃に転じる時でご紹介した各疾患について、より詳細な解説を加えました。

免疫機能が何らかの要因によって暴走し、自らを攻撃してしまう時に自己免疫疾患は起こります。
その多くは難病に指定されるほど症例が少なく、専門性の高い医師でなければ診断すら容易ではありません。

しかし、適切な治療には正しい診断が不可欠ですから、自ら症状に疑問を抱き、どんな病気であるか可能性を考える知識を身に着ける必要があるのです。
身体に現れる支障を本人以上に察知できる人はいませんよね。

つまり、最初に自己免疫疾患に気付くためには「自分の意識」が重要なのだと考えてください。
今回ご紹介する自己免疫疾患の一部が、その手がかりになりましたら幸いです。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・ギラン・バレー症候群
神経や筋組織に起こる症状の総称で、カンピロバクターを始めとした細菌感染をきっかけとして発症する危険性が指摘されています。
症状は主に急性、かつ多発性の根神経炎です。運動機能の低下や、手足に力が入らなくなるといったサインを見逃さないようにしたいところです。
悪化すれば呼吸機能にも障害が起こります。厚生労働省「特定疾患」に指定。
好発年齢平均39歳。有病率は人口10万人対年間2人程度。比較的男性がハイリスクです。

・重症筋無力症
抗アセチルコリン受容体抗体によって筋肉を動かすための神経伝達が阻害される病気です。
厚生労働省「特定疾患」に指定。視神経に沿って症状を呈する場合は「眼筋型MG」と呼びます。
MGは重症筋無力症(Myasthenia Gravis)の略。
ちなみに、「眼筋型MG」から重症筋無力症が始まる患者は半数に上るのだとか。
その場合は眼筋型MGから全身性へと発展します。好発年代は20歳から30歳で男女比1対17。有病率は人口10万対11,8人。

・自己免疫性肝炎
好発年代は中年以降。女性に多い疾患です。肝臓に炎症が起こるので進展すると肝硬変の危険も。
診断基準については国際自己免疫性肝炎グループが示した数値が用いられます。
抗体検査やIgG測定、肝生検によって確定。治療は免疫抑制剤かステロイドが主流です。

・原発性胆汁性肝硬変
男女比は女性に偏っており、やはり中年期に好発します。
自覚症状としては黄疸や皮膚掻痒感など。
ほとんど前駆症状が起こらない無症候性タイプもあるようです。
しかし、胆汁鬱滞型肝硬変は確実に、かつ急速に進行するので、胆汁排泄促進剤で対応できない場合には移植が必要になります。

・潰瘍性大腸炎
厚生労働省「特定疾患」に指定。好発年代は10歳から30歳および50歳から60歳。年間新規患者はおよそ5,000人。
潰瘍性大腸炎の患者総数は厚生労働省登録データによるとおよそ166,000人。
原因不明の炎症性腸疾患で、大腸粘膜の潰瘍が多発します。
血便、下痢、便秘を繰り返し、風邪をひきやすくなるなど、徐々に全身へと影響が波及していきます。

・クローン病
原因不明の炎症性腸疾患のひとつという意味では潰瘍性大腸炎と同様です。
こちらは口腔から肛門までのすべてで慢性肉芽腫性炎症が多発し、繰り返します。
厚生労働省「特定疾患」に指定。好発年代は10歳から20歳。
日本で確認されている罹患者は約40,000人。
潰瘍性大腸炎よりは発生頻度が低いですが、欧米的な食生活や喫煙、ストレス、経口避妊薬(ピル)、抗生物質との関連が疑われています。
「ごく当たり前の習慣」がリスクを引き上げている可能性があり、注意が必要です。
クローン病の自覚症状は「腹痛」「痔」「下痢」「発熱」「体重減少」など。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・原発性硬化性胆管炎
肝臓内外の胆管に炎症性の線維化から来る狭窄が起こり、胆汁が鬱滞する進行性の病気です。
潰瘍性大腸炎の関連疾患とも考えられ、好発年代は40歳前後。男女比2:1で中年男性が最もハイリスク。
日本では原発性硬化性胆汁肝炎の患者総数はおよそ1,200人と推測されています。
大腸粘膜における免疫機能の破綻から原発性硬化性胆汁肝炎へと至る可能性、免疫異常によって発症する可能性、遺伝子異常によって発症する可能性が指摘されていますが、現段階では明確な要因は特定できていません。
主な症状は全身の倦怠感や掻痒感など。黄疸、胆道感染症合併、腹痛、発熱などが現れるケースも報告されていますが、無症状の場合もあるので早期発見には定期的な血液検査が必要です。

・自己免疫性膵炎
自己免疫性膵炎は略してAIP(Autoimmune pancreatitis)と呼びます。
血清IgG4高値の症例が多いことからIgG4関連疾患として取り扱われ、また、「腫瘤形成性膵炎」とも呼ばれます。
膵癌との鑑別が難しいので、診断には最終的に検体検査を実施することになるでしょう。
自己免疫性膵炎(免疫性膵炎・腫瘤形成性膵炎・AIP)の罹患率は人口10万対0,71人で年間の新規受療者は約900人。患者総数は約5,800人。
好発年代は60歳代がピークです。
IgG4関連疾患は細分化するとそれぞれ男女比が異なりますが、自己免疫性膵炎に関しては3対1と明確に男性に比重が偏っています。
閉塞性黄疸、食欲不振、上腹部の不快感、涙腺腫脹、ドライアイ、口の乾燥、眼球突出などの眼窩内病変、甲状腺腫大、リンパ節の腫れ、水腎症、喘息のような諸症状、糖尿病などがAIPに関連して起こるので、自覚の手がかりにしてください。

・高安動脈炎
高安動脈炎は大動脈に炎症が起こる疾患の総称で、特に女性が気を付けるべき病気です。罹患者数は約5,000人。年間新規患者は約200人。
男女比率は1対9で、好発年代は15歳から35歳とのこと。若い女性ほど気を付けていただきたいと思います。
何らかのウィルス感染が契機になると考えられていますが発生機序はいまだ明確ではありません。
また、ごく一部にこの疾患が遺伝している可能性がありますが、こちらも要因となる遺伝子の特定には至っていません。
高安動脈炎の症状は発熱、全身倦怠感、食欲不振から始まり、体重減少、その後に炎症から来る血管狭窄、めまい、立ちくらみ、神経発作、脳こうそく、失明、難聴、耳鳴り、歯の痛み、歯の不調、首の痛み、頚肩腕症候群、腎機能低下、歩行障害、高血圧症など。
進行するほど危険度が上昇します。早期発見のため、些細な体調不良や違和感も見逃さずに記録する習慣を身につけましょう。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・グッドバスチャー症候群と急速進行性糸球体腎炎
グッドバスチャー症候群は急速進行性糸球体腎炎と肺胞出血を併発する致死性の高い病気です。息切れ、喀血、呼吸不全、浮腫、乏尿が起こり、治療を受けない場合90%が助かりません。治療は血漿交換や免疫抑制剤、肺、腎臓の移植など。
診断基準は「急速進行性腎炎と肺胞出血」「血清中の抗GBM抗体陽性」「顕微鏡下で壊死性半月体形成性腎炎、蛍光抗体法で糸球体係蹄壁にIgGの線状沈着」が確認されること。
グッドバスチャー症候群としての患者総数は不明ですが、罹患率の手がかりとしては急速進行性糸球体腎炎の新規患者数データがあります。
平成25年度について約2,400から2,700人の新規患者が病院で受療していると推定され、腎臓病患者の5,2%が自己免疫疾患だと考えられます。
血尿、蛋白尿、貧血、腎不全が急激に発症し進行しますので、尿量が急激に減少したり無尿になったり、浮腫、高血圧、発熱、倦怠感、関節痛、筋肉痛が起こったりしたらすぐに病院に駆け込みましょう。即座に手当てを受けられるかかりつけ病院を確保しておくことをおすすめします。

・巨赤芽球性貧血
悪性貧血の一種、自己免疫性慢性萎縮性胃炎を合併する赤芽球系の自己免疫疾患です。別名は「胃切除後貧血」。
ビタミンB12や葉酸の欠乏によって細胞分裂に支障が生じ、骨髄の中にある赤血球の元である赤芽球が正しく成長できず必要以上に大きくなり、赤血球になる前に壊れるようになってしまいます。
「巨赤芽球性貧血」という名称はこの機序から付けられました。
萎縮性胃炎の胃壁細胞の障害が基礎病変として下敷きにあり、そこから内因子分泌障害に発展して起こる病気だと考えるといいでしょう。
症状は動悸、息切れ、疲れやすさ、全身倦怠感、頭が重い、痛い、顔色が青白いなどの貧血症状と、舌の表面にある「舌乳頭」が委縮してしまう症状、またはハンター舌炎、味覚障害や慢性的な悪心。さらには手足のしびれ、歩行困難、意識混濁、意識高揚なども。
巨赤芽球性貧血のリスクを抱える人物像は「小腸切除手術を受けたことがある人」「胃を摘出した人」「消化管の手術を受けた人」「妊娠中の女性」「もともと貧血気味の人」「悪性腫瘍を発症した人」「白血病の人」「炎症性疾患を抱える人」「アルコールを多飲している人」「病気の投薬治療中の人」です。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・自己免疫性溶血性貧血
赤血球が自己免疫によって破壊される病気です。指定難病(特定疾患)のひとつ。
溶血性貧血の内3分の1がこれに該当し、好発年代は10歳から30歳と60歳以降。男女比は1対1,6。やや女性がハイリスクです。
原因は今のところ明確にはなっていません。
サインは貧血、黄疸、ヘモグロビン尿、胆石、脾腫(ひしゅ)など。発熱や体力低下、心不全、呼吸不全など風邪のような症状を伴うこともあります。
急速に進行するケースと慢性化するケースがあり、もともとこのタイプの貧血症状を有していた人物が何らかの感染症に罹ったり妊娠したり過剰なストレスがかかったりすると貧血症状が悪化するようです。注意しましょう。

・自己免疫性好中球減少症
自己抗体による血液中の「好中球」が破壊される好中球減少症です。
乳幼児の場合は慢性性の病態から自然治癒に向かう例が多く、遺伝性の場合は小児に好発します。
多くはほかの自己免疫疾患の二次症状として現れるようで、関連疾患は「細菌感染」「全身性エリテマトーデス」など。
全体を見れば発症率に年齢層で違いはなく、男女ではやや女性がハイリスクです。

・特発性血小板減少性紫斑病
厚生労働省によって指定された特定疾患のひとつ。血小板の生産が盛んになる一方で破壊が亢進し、血小板が減少していきます。
急性型は幼児期に多く、成人では慢性型が主流。好発する人物像は「比較的若い女性」です。
原因は麻疹や風疹、水痘などのウィルス感染とされており、脳出血を伴うケースがあるので早期診断が不可欠。月経や妊娠で危険度が高くなるので妊娠適齢期の女性は特に注意していただきたいと思います。

・バセドウ病
バセドウ病、橋本病、原発性甲状腺機能低下症はそれぞれ甲状腺に関連する病気です。
バセドウ病はバセドー病、グレーブス病、バセドウ氏病とも呼ばれる「自己抗体性甲状腺びまん性腫大症」のこと。
甲状腺機能障害の中では甲状腺機能亢進症の分類で、自己抗体によって甲状腺ホルモンの分泌が過剰になって代謝が異常活発化します。
原因は詳細不明とされていますが、遺伝や生活習慣、環境の影響が強いのではないかという意見も。
男女比は1対4で女性の比重が大きく、好発年代は20代から30代がピークです。
40代、50代と発症率は低下していきますが、だからと言ってリスク皆無というわけではありません。
アレルギー疾患を既往症として持つ方は留意してください。
バセドウ病に気付くポイントとなる症状はこちら。
手など末端の震え、高血圧、頻脈、大量に汗をかく、眼球運動障害(眼球突出)、高熱、おう吐、下痢、意識障害、精神不安、食欲の異常な亢進、あるいは体重減少、低カリウム血症、手足のまひなど。甲状腺クリーゼが起こった時には症状が急激に悪化するので命の危険を伴います。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・橋本病
橋本病もまた甲状腺機能障害のひとつですが、バセドウ病と比べると男女比が圧倒的なバランスで女性に偏っています。
男性対女性の比率が1対10から20ともなると、もはや前提として「女性の病気である」と言ってもいいのではないでしょうか。
別名「慢性甲状腺炎」と言って、甲状腺機能障害の中で最初に自己免疫疾患と認められた病気です。
好発年齢は45歳から65歳。炎症によって甲状腺が破壊されていくのですが、数値的には甲状腺機能亢進状態を呈することもあるのだとか。
初期症状は体重減少、脈拍増加など。そこから徐々に甲状腺機能低下症状が起こってくるので、初期症状に続く体重増加、脈拍低下、全身倦怠感、疲れやすさ、うつ症状、コレステロール値の上昇、便秘、意識障害、脱毛症などを見逃さないようにしてください。
また、橋本病は不妊症の原因になります。
「不妊症かな?」と思った女性は甲状腺機能の検査を受けてみるといいかも知れませんね。

・原発性甲状腺機能低下症
甲状腺自体に問題があって機能が低下する状態が原発性甲状腺機能低下症です。
橋本病とほぼ同義に扱われますが、原因不明かつ自己免疫性と思われるもの、または自己免疫性であり、かつ分類が難しく、さらに原発性と認められるもの、橋本病が原因で起こったものについて「原発性甲状腺機能低下症」と言います。
症状の所見は無気力、疲れやすさ、瞼の腫れ、体重増加、動きが緩慢になる、寒がり、睡眠時間が足りていても眠り足りない、声が枯れる、記憶力や判断力が低下するなど。血液検査と観察によって診断が行われます。

・特発性アジソン病
指定難病のひとつであるアジソン病、あるいは慢性原発性副腎皮質機能低下症とも。
副腎皮質の機能が低下する症状群のことです。
「特発性」は何ら原因が見つからないものを指し、年間660人と推定される新規アジソン病患者の内42,2%が特発性で、年々この割合が増加していると言います。
特発性のみ発症年齢や性別による発症率の多寡はほぼありません。結核性については40歳から60歳男性が好発分布帯です。
副腎皮質ホルモンの分泌が低下するので疲れやすくなり、全身倦怠感や低血圧、筋力低下と脱力感、体重減少、食欲不振、悪心、おう吐、下痢、その他精神的な症状が起こります。また、関節部や口腔内の皮膚に色素沈着が見られることも。

・1型糖尿病
すい臓のβ細胞が破壊されてインスリン分泌機能が低下し、高血糖を呈する病気です。
原因は自己免疫性の遺伝性や環境因子が複合しているとえられ、糖尿病人口の大多数を占める2型糖尿病とは性質が全く異なります。
分布は小児が大半で、発症率は人口10万に対して約2人。14歳までの小児では10万人対1,5人程度。
自覚症状の進展はまずのどの渇きや尿量増加、体重減少などから始まり、糖尿病性昏睡等の急性合併症へと悪化します。
成人は小児に比べれば罹患率が低いですが、甲状腺疾患との関連性があるために女性は注意が必要だと言われています。

・慢性円盤状エリテマトーデス
皮膚に円盤状の湿疹ができる疾患です。光に当たる部分に限局して症状が起こるもの、病変が全身に分布するもの、全身性エリテマトーデスのひとつとしてのものに分類できます。
全身性エリテマトーデスと違い、慢性円盤状エリテマトーデスでは皮膚にのみ抗原刺激が起こって湿疹が慢性化します。
物理刺激によって症状が悪化するので注意してください。この場合の湿疹は暗褐色で境界がはっきりしており、周辺の皮膚より少し隆起します。
また、表面に白い皮膚のカサカサが出ることが特長です。発展して皮膚がんになる可能性があるので、なるべく早めに治療を受けましょう。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・限局性強皮症
強皮症は皮膚が固くなる疾患で肺や腎臓に障害が進展しますが、限局性強皮症では特に光が当たる部位で局所的に皮膚の硬化が散発するものの、内臓機能には影響を与えません。別名はCREST症候群。限局性強皮症は皮膚にのみ効果が起こる、全身性強皮症とはまったく異なる病気なのです。
ただし、抗U1-RNP抗体(混合性結合組織病)陽性の場合は高肺血圧症を合併することも。とはいえ限局性から全身性に移行する可能性はないので、その点については安心して治療にあたってください。

・天疱瘡
天疱瘡は抗表皮細胞抗体(IgG抗体)の作用によって水疱ができる皮膚疾患で、2013年には5,596人が特定疾患と認められた病気です。
好発年代は40歳から60歳の中高年。男女では女性の発症者が多い傾向があります。
原因となる抗体そのものは特定できていますが、なぜその抗体が作られるようになるのかといった機序については分かっていません。
自己免疫疾患として天疱瘡が現れる時、大部分は尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡です。
症状の特徴は尋常性天疱瘡の場合は口腔の水疱、びらん、痛みがあり、進行とともに症状が広がります。
口腔などの粘膜に集中して症状が現れるタイプと、粘膜をメインとしながらも全身に水疱が広がるタイプがあり、また、落葉状天疱瘡では主に光と空気に接する部位に皮膚の剥離を伴う湿疹やびらんが起こり、全身に広がります。
基本は自己免疫性であるために家族間の感染や遺伝の恐れはありませんが、水疱やびらんで防衛機能が弱まった皮膚に何らかの感染症が起こった場合は別です。天疱瘡のほかに感染症に対する治療や防疫のケアが必要になるでしょう。
治療を始めると長期間続けなければなりませんが、症状が重度になると日常生活に支障をきたす可能性が高いので注意が必要です。
「尋常性天疱瘡」「落葉状天疱瘡」のほかに「紅斑性天疱瘡」「増殖性天疱瘡」「腫瘍随伴性天疱瘡」「IgA天疱瘡」「水疱性類天疱瘡」「粘膜類天疱瘡」「線状IgA水疱性皮膚症」などの種類があります。

・膿疱性乾癬
これも表皮に起こる自己免疫疾患です。乾癬全体が日本では発生頻度が少なく、およそ0.1%程度であるために認知度は高くありません。
しかし第二次世界大戦敗戦後に徐々に日本人の乾癬発症者が確認されるようになって、現在では特定疾患治療研究事業の対象となっています。
特に膿疱性乾癬は全身症状が強く出るタイプで、治療には入院が必要なケースがほとんどです。
通常の尋常性乾癬とは発生理由も治療方法も異なるので、診断の際には複数の意見を参考にして誤診を避けるようにしましょう。
これは尋常性乾癬と診断された結果、治療の副作用で膿疱性乾癬を発症する可能性もあるからです。
膿疱性乾癬で発生する皮膚の病変は「無菌性膿疱」と言い、膿がたまった塊が皮膚に散発します。
尋常性乾癬と併発した場合には皮膚上に通常の乾癬プラークと無菌性膿疱が同時に発生するわけですが、不思議なことに乾癬プラークの存在する場所には無菌性膿疱は形成されないのだとか。病変の発生部位が限定される局限型、全身に発生する全身型その他の分類があります。
1年間で新たに特定疾患受給対象者となる患者はおよそ80人で、受給者全体では1,900人前後です。
罹患率の低さが誤診のもととなり、誤診は意味のない治療や症状を増悪させる原因になります。
好発年代である50歳から70歳か、妊娠中の女性で以下の症状がある時には特定疾患に造詣の深い医師を探して受診するようにしましょう。
手のひら、足の裏、指先に膿疱性乾癬が現れる。または全身に小膿疱が現れる。
これに発熱、全身倦怠感、発赤、手足のむくみが伴う場合は汎発型膿疱性乾癬であり、妊娠期に特発するものを発疹状膿痂疹(ほっしんじょうのうかしん)と言います。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・尋常性乾癬
膿疱性乾癬の場合は男女差がありませんが、こちらについては男性が女性より2倍ほど高いリスクを有します。
乳幼児から後期高齢者まで幅広く罹患するものの好発年代は30代から40代の中高年とも。
表皮の増殖が異常に亢進して病変を形成する病気です。
病変部位は表面から確認でき、炎症、角化、剥離を繰り返しつつ真皮内の血管肥大が起こります。
病態は複数の分類があり、関節リウマチ様症状を呈するケースを特に関節症性乾癬(乾癬性関節症)と呼びます。
発生機序にはT細胞による自己免疫が深く関与していると考えられるものの特定の外因的要素は解明されておらず、現時点では戦後に拡大した西洋的な生活習慣そのものが悪因であるのでは、という意見が優勢です。
環境ストレス、心的ストレス、高脂肪の食生活などを継続している方は気を付けましょう。
日本では罹患率0.1%程度ですが、西洋では比較的よくある皮膚疾患のようです。環境的素因、生活習慣的素因のほか、遺伝因子が関与している可能性も。

・類天疱瘡
天疱瘡の一種として語られることがある類天疱瘡は、疫学的には別の治療を必要とする病気として区分されます。
さらに類天疱瘡の中でも「水疱性類天疱瘡」「粘膜類天疱瘡」「後天性表皮水疱症」といった種類があり、また、限局性、全身性、さらに重症度で異なる治療方法が必要です。
表皮の基底膜にIgG自己抗体が作用して水疱やびらん、紅斑を起こす病気で、確実に治療が必要な段階にある患者数は全国に7,000人から8,000人ほど存在すると言われています。ただし、未治療の軽症患者については実数の把握ができていません。
好発年代は70歳以上。表皮や口腔粘膜の瘙痒感、浮腫性紅斑、緊満性水疱、びらんなどが特徴です。表皮、口腔のほか咽頭、食道、尿道、膣、肛門などに症状を呈することも。

・妊娠性疱疹
妊娠期に発生する類天疱瘡の一種で、水疱性類天疱瘡とも。妊娠期間中のみ限定的に発生し、出産後に解消するケースが多いので母体に対する危険性はそう大きくはないようです。
ただし、あまりに痒さに蕁麻疹と誤診する事例も確認されているので、鑑別については注意しましょう。発症が妊娠期に限られる理由は解明されていません。
また、反復して発症すると重症化する可能性があります。
症状の経緯はまず全身至る所に現れる紅斑から始まります。
強いかゆみを伴いつつ水ぶくれに変化していきますが、例えば口腔内などの粘膜部に発生しても痛くはなりません。これが特徴です。
妊娠中という特異性から基本的には外用薬による治療しかできませんから、皮膚に刺激を与えないような生活を心がけて予防する意識を持ってください。
発症した場合にはなるべく早く医師に相談するようにしましょう。

・線状IgA水疱性皮膚症
後天性表皮水疱症とともに線状IgA水疱性皮膚症も類天疱瘡群の一角を占めています。
分類としては同じ枝に属していますが、治療の過程では他の天疱瘡・類天疱瘡との鑑別が必要です。
皮膚生検と蛍光抗体法検査が基本対応。線状IgA水疱性皮膚症の発症率は極めて少ないため、正確な診断を行える医師は多くありません。
全身に紅斑が現れ、その付近に輪のような小水疱と非常に強いかゆみを伴う時には難治性類天疱瘡の可能性を疑ってみる必要があるでしょう。線状IgA水疱性皮膚症の場合は紅斑や水疱が関節の屈曲部に集中する傾向が特徴です。皮膚疾患に造詣の深い医師のいる病院を探して受診することをおすすめします。

・後天性表皮水疱症
やはり類天疱瘡の一種、後天性表皮水疱症も難治性の類天疱瘡です。
比較的危険性の高い皮膚疾患で、炎症・水疱・びらんの生じる場所は人それぞれ。粘膜部にも生じます。
眼球、口腔、鼻腔、消化管内にも病変が現れる可能性があり、中には爪が脱落した事例や、失明に至った事例もあるのだとか。
好発年代は高齢期で確認されている発症者は現在およそ250人。罹患率の低い病気ではあるものの、免疫力が弱っている高齢者は重症化しやすいので注意してください。
発症した場合はなるべく皮膚刺激を避け、重症化を避けるように工夫しましょう。
外部刺激によって症状は増悪します。
天疱瘡・膿疱性乾癬・尋常性乾癬は表皮疾患。類天疱瘡の類(妊娠性疱疹・線状IgA水疱性皮膚症・後天性表皮水疱症)は表皮基底膜疾患です。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・円形脱毛症
発生する理由が分からなかった平安時代には「鬼が嘗めた後」ということで「鬼舐頭(きしとう)」と呼ばれていたそうです。
長らくストレスが原因とされてきましたが、自己免疫疾患の研究が進む中で円形脱毛症もまたその一環なのではないかという説が支持されるようになりました。
日本皮膚科学会によると発症率は人口の1から2%程度。アメリカでは0.1から0.2%程度だと言うので、日本国内の円形脱毛症発症率は比較的高いほうなのでしょう。
いわゆる10円玉ハゲのように頭部などで局所的に症状が現れるケースが多く、しかしながら徐々に無毛の領域が拡大したり、多発型で現れた症状が結合して進行したり、あるいは頭部のみならず全身で症状が発生し、全身無毛になったりもするので、一般的な薄毛(AGA)との鑑別には抗体検査が欠かせません。
また、円形脱毛症の中でもきっかけとなった原因によってアレルギー性と非アレルギー性に分かれます。アレルギー性の場合は関連疾患として別のアレルギー症状の治療も必要です。
非アレルギー性の場合はストレスが一番理由として多く、ストレス要因の解消とともに症状も収まっていくケースが多いようです。
症状が現れたならば医師と相談の上で経過を観察することをおすすめします。
円形脱毛症から永久的な脱毛状態になる可能性は低いので、突然症状が現れたとしても焦らず落ち着いて対処してください。

・尋常性白斑(サットン後天性遠心性白斑・サットン母斑)
自己免疫疾患の中では「このような病気がある」という認識率が非常に高い病気です。
かの有名なマイケル・ジャクソン氏が患ったことから「皮膚が白くなる病気がある」と認識した方は多いはず。
その正体がこの尋常性白斑なのです。マイケル・ジャクソン氏はもともと濃い目の肌色でしたが、歳を取るごとに肌の色が薄くなり、最終的には白人からも浮いてしまうほどに色素を作るメラノサイトが破壊されてしまいました。
日本での有病率は1.68%(2010年)。全世界的には1%以下と言われているので、この病気も日本人は比較的発生しやすいのだと覚えておきましょう。
汎発型では多発的に白斑(脱色素斑)が発生して全身に広がっていきます。こちらが自己免疫疾患としての白斑で、もうひとつの神経分節型とは発生機序からして完全に異なります。
神経分節型の尋常性白斑は精神不安やホルモンバランス失調、自律神経失調がある人物によく発生し、身体の片側など、皮膚分節の一部位に限定して症状が現れる傾向が特徴的です。
可能性として挙げられる合併症は、精神運動発達地帯、けいれん発作、小脳運動失調、筋肉や骨格の異常、難聴、眼病、腫瘍、免疫不全など。
確実な治療方法はありませんが、現在トップモデルとして活躍するウィニー・ハーロウことChantelle Young (シャンテル・ヤング)さんのような方もいます。
外用薬や紫外線照射、皮膚移植など、現段階では対処法が施行されている段階ではありますが、ひとつひとつ試して有効性のある治療方法を見出していただきたいと思います。
美白美容液などの副作用で白斑が現れるケースもあるので、皮膚に触れるものには十分注意しましょう。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・原田病
メラノサイトが自己免疫による攻撃を受けて「ブドウ膜炎」を起こす眼病のひとつで、正式には「フォークト・小柳・原田病」あるいは「フォークト・小柳病」と表記。類似疾患には「ベーチェット病」「サルコイドーシス」などがあります。
発生頻度は1位サルコイドーシス、2位原田病、3位がベーチェット病で、原田病の好発年代は20代から40代の女性です。
症状は前駆期の風邪のような病態から始まります。頭痛、発熱、耳鳴り、めまいが3日から7日程度続き、次の段階は眼病期。難聴を伴う視力障害へ。
数カ月後には回復期に入って皮膚の白斑と「夕焼け眼底」「ダレン・フックス斑」などが起こり、そこから緑内障や白内障に進展する可能性もあるので、経過はこまめに観察するべきです。
原田病ならば予後良好とされていますが、症状が進行する過程で混合型に推移する可能性も高いので安心はできません。

・自己免疫性視神経症
視神経に炎症が起こる自己免疫疾患で、好発年代は20代から30代の女性。初めは片目に症状が限定されるケースが多く、特発性視神経炎との鑑別が難しいですが、ウィルス感染が原因ではないかと言われています。
進行すれば炎症は両目へ、そこから全身へと広がり、多発性硬化症が起こることも。
治療に関しては原田病とともに議論の俎上に上る機会が多い病気です。「これをすれば絶対治る!」という治療法はまだ確立されていません。
しかし、風邪などで弱った体にストレスが追い打ちをかけて視神経の炎症に至る事例があるとも言われているので、もしこの疾患を発症した場合にはとにかく神経を休め、よく養生して「身体の正しい働き」を取り戻すように心がけましょう。

※多発性硬化症について
:視神経だけでなく脳にも炎症が起こる。視神経と脳を中心として炎症症状が広がるので二次疾患の危険性が高い。

臓器特異性自己免疫疾患(特定の臓器に起こる自己免疫疾患)

・自己免疫性内耳障害
自己免疫による難聴やめまいなどを発症する疾患で、疫学的には日本に約2万人の患者がいると推定されています。
他の自己免疫疾患の関連症状として現れるケースもあり、厳密な原因や発生機序については研究の途上です。
もともとあった内耳障害によって誘因される可能性、ウィルス感染等によって誘引される可能性、遺伝因子によって誘引される可能性など複数の説に基づいた議論が競い合っているところで、治療法についても試行錯誤の中で効果を検証中だと考えていいでしょう。
治療法の第一選択肢はステロイドホルモン治療。次に免疫抑制剤による治療。
その他血漿交換法や抗悪性治療薬による治療、抗腫瘍壊死因子による治療なども実効性があるとのこと。
症状は2種類で、耳鳴りと進行する難聴が起こる「蝸牛症状」と、これに平衡障害が伴う「前庭症状」です。
耳が聞こえにくくなった。なんだか転びやすくなったと感じたら、その原因として内耳障害を、さらに厳密な種類分けとして自己免疫性内耳疾患も、可能性のひとつに数えておくことをおすすめします。

・特発性無精子症
抗精子抗体によって生じる無精子症で、男性不妊症の1つの分類に該当します。
非閉塞性無精子症と判定されたならば免疫性の無精子症の可能性も視野に入れる必要があるでしょう。
抗精子抗体にもさらにいくつかの種類があり、機能としては精子の頭と頭を接合してしまうものや、精子の頭と尾を接合してしまうもの、精子の尾と尾を接合してしまうものなどの相違があるのです。
抗体検査でこれらのいずれかに陽性反応があったとしたら、抗体を特定して治療に進んでください。

・習慣性流産
流産を反復するケースを習慣流産、反復流産、習慣性流産などと呼称しますが、その原因は複合的なものであり、厳密な特定は難しいと思っていいでしょう。
ただし、根幹的な部分に自己免疫が関わっている可能性は指摘されています。
全身性の自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)や抗リン脂質抗体症候群は特に絨毛膜下血腫による流産に関連性が高いようです。

・慢性萎縮性胃炎・慢性胃炎
病態は慢性的な胃炎です。別名はA型胃炎。血液中の抗壁細胞によって胃壁の働きが損なわれるとともに胃壁細胞や内分泌物が減少し、低酸素状態やビタミンB12吸収不良からやはり自己免疫疾患のひとつである巨赤芽球性貧血を合併するという経路を辿ります。
A型胃炎とヘリコバクター・ピロリ菌によるB型胃炎の鑑別は内視鏡生検や血液抗体検査によって行います。
自己免疫性の萎縮性胃炎(慢性胃炎・A型胃炎)のサインは貧血、手足のしびれなどの神経症状です。

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ライタープロフィール

円谷円谷ミナミ
基本的に斜めの姿勢で世の中を見つめるフリーライター。
性的思考はボーダーレス。ただし多少女性に甘い。
自分のキュアリは?(女性としての内面磨き)(沈思黙考・無言実行)
”秘すれば華”を人生を通して実現する方法を模索している。
乙女の窓辺~女性にまつわる、うわさの検証~の四コマ連載中